□ episode X □    騎士
  そろそろ日も昇ろうかという時間、馬のひづめのような音が寝ているアヴェン家 の一同を起こした。何事かと目をこする面々の中、misteroだけが玄関先に駆け出していった。
“兄上!”
  バタンと開けた戸の先では、今まさに一騎のナイトが召喚を解除したところだっ た。
  misteroに家まで引き入れられて、その人物はぺこりと頭を下げた。
  彼の名はアンバース。ロイムの長男であり、misteroの兄。
  曰く、misteroとともにここに連れてこられる間、彼の大事なものが野良Mobに奪 われ、今の今まで取り返しに行っていた、らしい。
  到着先も知っていたし、心配するような幼さでもないために、そのまま一人でや ってきたのだ。
しかし………家族に置いていかれてまで追いかける程大事なものとは……。
  全ての視線が、アンバースの持つ鞄に向けられた。

“ああ、おかげさまで、ちゃんと取り戻しましたよ”

  ドサリと中身をテーブルにあけると、そこには、大量の耳、耳、耳。 さまざまな種類の、獣耳がそこにあった。

“私の、いえ、世界の宝とも言うべき獣耳コレクションです!”

  ポカンと口を開けるアヴェン家を余所に、彼はとうとうとその魅力について語り 始める。
  それにうんうん頷いているのは妹のmisteroだけであった。

“ま……ぁ、とにかく、歓迎するよ。ロイム兄さんが帰ってくるまで、よろしく ね”

  こうして、強い個性を持つ家族が加わったのだった。
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